風刺画「中国を分割する列強諸国」に描かれている人物は誰?作者や時代背景、意味について解説します

風刺画_中国分割

この記事では、風刺画「中国を分割する列強諸国」について、解説します。

目次

風刺画「中国を分割する列強諸国」の解説

風刺画_中国分割

この風刺画には6名の人物が描かれています。

左からヴィクトリア女王(イギリス)、ヴィルヘルム2世(ドイツ)、ニコライ2世(ロシア)、女性像マリアンヌ(フランスの象徴)、サムライ(日本の象徴)

彼らの背後では清国人がなすすべもなく手を上げています。

風刺画「中国を分割する列強諸国」の作者は誰?

この風刺画の正式なタイトルは「The Chinese Cake(中国のケーキ)」です。

1898年にフランスのイラストレーター・風刺画家であるアンリ・メイヤー(1841 – 1899)によって描かれました。

教科書に載っているほど有名な風刺画なので、ご存じの方も多いと思います。

日本では「中国分割」や「中国を分割する列強諸国」という名前で紹介されることが多いため、当記事でも「中国を分割する列強諸国」という名前に統一します。

風刺画「中国を分割する列強諸国」は何を意味している?

1894年の日清戦争で日本が勝利したことをきっかけにして、中国に対する列強の興味は高まりました。

当時の列強はアジアへの進出を始めており、清国での権益を拡大していきます

当時の列強による世界政策
イギリス:1875年にスエズ運河株を買収し、1877年にはヴィクトリア女王がインド皇帝に就任してインドを完全に自国の領土とした。1880年代にはビルマ(現ミャンマー)を併合、アフリカ分割と同時にアジア進出を進めた。

ドイツ1870年代から80年代にかけて、南太平洋の島々を植民地とした。1890年にはそれまでヨーロッパの現状維持につとめていたビスマルクが失脚し、ヴィルヘルム2世の親政のもとに、積極的な世界政策を進めた。

ロシア1877年、露土戦争でオスマン帝国を撃破してバルカン半島に南下するとともに、1890年代にはシベリア鉄道の建設を進めるなど、アジアヘも進出を続けた。

フランス1884年に清仏戦争をおこし、翌年にベトナムを保護国とした。1887年には仏領インドシナ連邦を形成した。

具体的には、ドイツが宜教師殺害事件をきっかけに、1898年に山東半島の膠州湾を租借すると、続いてロシアが、三国干渉によって日本が清国に返還した遼東半島の旅順・大連などを租借しました。

風刺画をよく見てみると、ドイツのヴィルヘルム2世がナイフを刺している先に「KIAO TCHEOU(膠州湾租借地)」、ロシアのニコライ二世の手元には「PORT ARTHUR(旅順・大連)」と書かれています。

ドイツとロシアそれぞれが租借した土地の名前が書かれているというわけですね。

引き続いて、イギリスが威海衛·九竜半島を、フランスは広州湾をそれぞれ租借し、中国は風刺画の通り列強によって分割されることになります。

ここで気になるのは「アメリカ」です。

風刺画にもアメリカは登場していませんよね。

中国分割にアメリカが出遅れてしまった理由は何なのでしょうか?

実は、アメリカは同時期にスペインと戦争をしていた(米西戦争:1898)のです。

そのため、アメリカは中国分割において、列強各国に後れを取ってしまいました。

後れを取ったアメリカは米西戦争に勝利してフィリピンを獲得し、アジア進出の足場を作ることに成功します。

しかし、アメリカが中国に進出しようとした1898年、既にドイツ・ロシア・イギリス・フランスは中国に租借地を設けており、中国分割は進んでいました。

そこで、1899年にアメリカは国務長官ジョン・ヘイが清国に対する門戸開放・機会均等・領土保全を宣言して、列強の清国進出に何とか割り込もうとしました

その後列強はこれらの租借地を根拠地として、鉄道敷設権や鉱山採掘権などを得て、清国での権益を拡大していったのです。

他にもある?中国分割を描いた風刺画

実は中国分割を描いた風刺画は他にもあります。

風刺画_中国分割2

こちらは中国で1900年頃に絵葉書に描かれた中国分割の風刺画(作者不詳)です。

前述の「中国を分割する列強諸国」とよく構図が似ていますが、こちらは「CHINA」と書かれた布を列強が引っ張り合っている様子を描いています。

そしてもう1枚。

風刺画_中国分割3

こちらは風刺画ではありませんが、1900年にアメリカのウエストバージニア州で発行されていたDaily Inter Mountain紙に掲載されたもので、1900年当時の列強による中国分割の様子を描いた図です。

中国(清)がドイツ・ロシア・イギリス・フランスによって分割されている様子がよくわかる図となっています。

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