「戦争」を描いた風刺画まとめ~日清戦争からベトナム戦争まで~

風刺画_戦争

この記事では、近現代の戦争においてどのような風刺画が描かれたかを紹介します。

風刺画を読み解けば、各戦争の時代背景や当時の世相を知る助けになります。

目次

日清戦争を描いた風刺画

日清戦争_風刺画_ビゴー
魚釣り遊び

日清戦争を描いた最も有名な風刺画がこちらの「魚釣り遊び」です。

COREE(朝鮮)と書かれた魚を日本と中国(清)が釣ろうとしており、漁夫の利を狙うロシアが橋の上からその状況を見つめています。

日清戦争当時の状況を海外から見た風刺画をもう一つ紹介します。

こちらはイギリスの「パンチ誌」(1894年11月17日号)に掲載された風刺画です。

左の人物(日本)が中央の人物(中国)を殴り、泣かせています。

右側には中国を助けるわけでもなく、その様子を冷ややかに見つめている人々(西側諸国)がいますね。

日清戦争の結果を受け、西側諸国は日本が強力な帝国主義大国の一つであることを認識し、中国の地位は著しく低下しました。その様子を端的に表現した風刺画です。

日清戦争について描かれた風刺画については下記記事で詳しく解説しています。

日露戦争を描いた風刺画

こちらの風刺画もビゴーによって描かれたものです。

中央の日本刀を持った日本人が左のロシア人に戦いを挑もうとしており、後ろではイギリス人が日本をけしかけています。

右端に写っているのはその様子を眺めているアメリカ人です。

日露戦争は1904年から1905年にかけて、日本とロシアが朝鮮や満州をめぐって戦った戦争です。

当時新興国であった日本が大国であるロシアに挑んだため世界の注目を浴びた一方、その背後では大国の思惑が絡み合っていました。

日露戦争を描いた風刺画についてはこちら↓の記事に詳しくまとめています。

第1次世界大戦を描いた風刺画

こちらの風刺画は第1次世界大戦初期の様子を表したものです。

綱引きをしている9人の男と審判が1人いますが、それぞれ下記の国を表しています。

  • 左側:オーストリア・ハンガリー、ドイツ(中央同盟国)
  • 中央の審判:イタリア
  • 右側:ロシア、ベルギー、フランス、イギリス、日本、セルビア、モンテネグロ(連合国)

第1次世界大戦は連合国中央同盟国の間で争われたものでした。

イタリアは第一次世界大戦初期には「中立」の立場を取っていたため、この風刺画上でも審判の立場になっています。

第1次世界大戦の様子を描いた風刺画をもう一つ紹介。

こちらの風刺画も同様、犬に模した連合国がヨーロッパの地図を食いちぎろうとしていますが、イタリアは左上にいて何食わぬ顔をしています。

※イタリアは第1次世界大戦開戦時には中立の立場を取っていましたが、最終的に連合国側で参戦しています

また、第1次世界大戦には日本も連合国側で参戦しました

こちらの風刺画はドイツの風刺雑誌「Lustige Blätter」に掲載されたものです。

風刺画のタイトルになっている「Schuft No.7」は「7番目のならず者」という意味。日本が第1次世界大戦において7番目に宣戦布告したことを指しています。

宣戦布告後、日本は中国におけるドイツの租借地を攻めましたが、宣戦布告されたドイツ側では日本はこのように描かれていました。

第2次世界大戦を描いた風刺画

この風刺画のタイトルは「BE CAREFUL WHAT YOU SAY(発言に気をつけろ)」。

ヒトラー政権は通信を傍受して盗聴する手段を持っているということを人々に知らしめるために描かれました。

第2次世界大戦時に描かれた風刺画は、このように両陣営ともにプロパガンダ的なものが多く、従来のような第3者的視点で描かれたものが少ないのが特徴です。

こちらも同様、連合国陣営で描かれたもの。

2人の男がバーで会話していますが、よく見ると背景のグラスやボトル全てにヒトラーの似顔絵が描かれています。

風刺画のタイトルは「CARELESS TALK COSTS LIVES(不注意な会話が命取りになる)」というもの。

こちらは逆にナチス側で描かれたプロパガンダポスターです。

アメリカがいかに横暴に振る舞っているかを伝えようとしています。

金や銃を手に握りしめたレイシストとしてアメリカ人を表現することで、ドイツの人々に反米感情を抱かせようとしています。

こちらは1944年頃にイギリスで描かれたポスターです。

「あまり話さないように」というメッセージから、民間の中にドイツ人スパイが紛れ込んでいる危険性を人々に伝えるものになっています。

こちらはアメリカの新聞に掲載された風刺画で、教科書に載るくらい有名なものです。

独ソ不可侵条約(1939年にナチス・ドイツとソビエト連保の間に締結された条約)を風刺したもの。

タイトルは「WONDER HOW LONG THE HONEYMOON WILL LAST?(いつまで仲良くできるかな?)」。

天敵と言われたアドルフ・ヒトラーとヨシフ・スターリンが手を結んだことは、世界中に衝撃を与えました。

ベトナム戦争を描いた風刺画

こちらは1960年代に始まったベトナム戦争を風刺した風刺画です。

アメリカ合衆国は1964年頃から1972年にかけてベトナム戦争に介入し多くの軍隊を投入しましたが、結局戦争を終えることができず撤退することになります。

この風刺画のタイトルは「VICTORY’S JUST around THE corner(勝利は目の前だ)」。

長期間の介入にも関わらず戦局を打開できないアメリカを皮肉っています。

こちらも同様にベトナム戦争の長期化を風刺したものです。

タイトルも似ていて「AS I SAID, VICTORY IS JUST AROUND THE CORNER(前にも言ったように、勝利は目の前だ)」。

作者はアメリカ人の作家であるトム・エンゲルハートで、この作品は1967年に公開されました。

迷路で迷っているように見える中央の男性はベトナム戦争でアメリカ軍の指揮を執ったウィリアム・ウェストモーランドとされています。

まとめ

この記事では、戦争を描いた風刺画についてまとめました。

時系列で見ていくと、第2次世界大戦とそれ以前を比べると、風刺画のスタイルがかなり違うことがわかります。

第1次世界大戦頃までは中立の立場で描かれた風刺画も数多く見られましたが、第2次世界大戦は文字通り世界中を巻き込んだ戦争であったため、描かれた風刺画やポスターなどもどちらかの陣営に沿った内容になっているものがほとんどです。

風刺画を自由に描くことができる現代の世界は幸せなのかもしれません。

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